百年日記帖

ukiyo girlというバンドの人の非商業的な日々 目指せ百年

次やったら殴る

 こないだ、家の前にある長い直線の道を車で走っていたら、急に大きな破裂音が鳴り響き、目の前が大きな火花と煙に包まれた。自分でも何が起きたのかまったくわからなかったし、車が爆発したのかと思った。すぐに脇の道に逸れて車を停めた。その破裂音が鳴ったのは、前方から二人乗りをした男女の学生数人がやってきて、それとなく避けて通ったすぐ後だった。きっと、その学生が爆竹かなんかを車道に投げたのだろう。それが前輪に見事に着弾し、火花と煙が上がったというわけだ。

 「きっと学生が爆竹かなんかを車道に投げたのだろう」と書いたが、自分でもまったく意味がわからない。畑の作物が荒らされていて、「きっとイノシシかなんかが荒らしたんだろう」と言うのとはワケが違う。立派な犯罪行為である。

 実際、学生たちが爆竹を投げる瞬間を見たわけではなかった。「半袖の夏服を着て、二人乗りでこちらへやってくる男女の学生がこちらへ向かってくるなア、嗚呼、青春の1ページだなア」と思い、車内に流れるミツメのクラゲをのんきに口ずさみながら、それとなく右へ避け、通り過ぎたと思ったら、突如前輪で爆発し、火花と煙が起こった。何度もそのシーンを思い返したし、その上で今、文章にしているが、まったく意味がわからない。爆竹かどうかだったかさえ、わからない。ただ、明確なのは「大きな破裂音と共に、火花と煙が上がるもの」を投げつけられた、ということだけだ。

 あれは、一体なんだったのだろう。あのグループの内の一人が、たまたまポケットに爆竹を入れていて、「タバコでも吸うか」と思って火をつけたのが爆竹で、「うわっこれ爆竹じゃん」と思って放り投げたのが、たまたま僕の乗っていた車に着弾したのだろうか。まるで昭和のナンセンス・ギャグ漫画のようだが、それくらいのことじゃないと、説明がつかないくらい、意味がわからなかった。

 ブチ上がる心拍数を必死に抑えながら、妹に事の顛末を話すと「お前、”やった”な?」と疑われた。普段から適当なことしか言っていなかったので、この話もすべて作り話だと思われてしまったのだ。このブログでも、「ライブハウスのリハで『ツェー』と言いたすぎてそれしか言えなくなってしまった男」とか、「数百人の鬼ギャルがライブハウスのフロアを埋め尽くしていた話」とか意味不明な、適当なことばかり言ってるから、きっと信じてくれないかもしれないが、本当にすべて嘘偽りなく本当の話だ。「事実は小説よりも奇なり」とはよく言ったもので、まさか学生に爆竹を投げつけられる日が来るとは思っていなかった。

 あれから、爆竹事件を何度も振り返るうちに、一つ気づいたことがあった。その日はちょうど七月十三日で、迎え火の日だったのだ。地域によっては違うのかもしれないが、東京の田舎にある僕の街では、七月十三日、お盆になると家の門口にあたる場所で麦藁なんかを焼いて、先祖の霊を迎え入れるのだ。その時も、ちょうど夕刻だったこともあって、車に乗りながら、いろんな家で野火を焚き、消している姿が見られた。

 そう考えると、彼らがやっていたのは、”迎え火”だったのではないだろうか。先祖を迎え入れるために、彼らは爆竹に火をつけ、霊界からも見えやすい車道に放り投げたのだ。現代では、火災などの原因になったり、集合住宅地ではトラブルを呼んだりすることから、提灯に灯をつけるだけだったり、装飾のみで迎え火とするパターンも多いらしい。彼らの爆竹に火をつけるという行為は、そういった現代的な感覚の迎え火だったのかもしれない。そう考えると、ちょっとロマンチックなものに思えてくるし、ある種根拠のあるものに見えてくる。

 そう思えるのも、学生たちの見た目がいわゆるなヤンキー、不良じゃなくて、青春を謳歌していそうな男女だったのも起因している。まるで、YOUR ROMANCEの「Kids」のビデオで発煙筒を持ちながら、二人乗りをしている彼らのような感じで、前方からやってきたのだ。少し前に「そうして私たちはプールに金魚を、」という映画があったが、それと同じような純粋な感覚で、あの二人乗りの後ろに乗っていた女の子が「ねえ、爆竹を街にバラまいてさ、それで迎え火をしようよ。そしたら幽霊たちも気づくはずだよ」なんて言って、あの行動に出たに違いない。

 ここまで書いて、「ああ、なんて純粋でロマンチックな子たちなんだ......ウーン、アッパレ!」と一瞬思ってしまったが、やっぱり冷静に考えてもまったく意味がわからないし、「おーい磯野!爆竹をバラまいて迎え火しようぜ!」なんてことが許されていいはずがない。社会は怖いのだ。それに、僕は学生時代に女の子と二人乗りをしたこともなかったので、余計に腹が立ってきた。ロマンチックだとか、青春だとか、迎え火だとか、そんなものはどうでもいい。次やったら殴る、そう俺は今心に硬く決めた。だから、次そういうことがあった場合、必然的に殴ることになると思うけど、それは別に不自然なことなんかじゃないはずだ。

 まあ今回は特別にやめとくけども。

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