百年日記帖

ukiyo girlというバンドの人の非商業的な日々 目指せ百年

ナンバーガールとぼく

 昨日ブログで書いた、高校時代に作ったデモCDで使った写真が出てきた。

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 改めて見返してみると、埼玉のあの土地のさびしい感じがとても集約されているように思う。果てしなく広がっている茶畑と、絵に描いたようなくっきりとした鉄塔、それに右側に申し訳程度に映っている、フジパンの古びたコンテナがなんとも淋しげで良い。自分のいままで作ってきた曲も、実はスクールバスから毎日眺めていたこの風景が根底にあるような気もしてくる。なんとも不思議な土地だ。

 登下校中に、スクールバスから茶畑を眺めながら、音楽を聴いてぼーっとするのが好きだった。片耳だけイヤホンをつけて、友達と他愛もない会話をしながらバスに揺られたり、一人で帰りに、少し暗くなったあの辺りを揺られながら、じーっと音楽を聴いているのがとても心地よかった。初めての登校で、ドキドキしながらバスに揺られていたときもそうしていたし、片想いしていた女の子が彼氏と帰っているのを横目にしながら一人茫然と乗っていたこともあった。いろんな思い出や記憶が、風景や音楽とともに結びついている。

 高校一年生のとき、軽音部の二つ上の先輩とお付き合いすることになった。それまで約二年半、家族以外の他人とほぼ一言も話していないような生活だったので、人と接するということが、右も左もわからず、話すときはいつも緊張した。その先輩は、どこか落ち着いていて、映画や漫画に詳しい、かっこいい人で、年齢以上に大人に見えた。ある日、「このバンド世界一かっこいいから聴いて」と言われて、ナンバーガールのベスト盤を貸してもらった。iPodに入れて、次の日の登校中に、スクールバスで聴いていたが、まったく良さがわからなかった。音が汚いし、うるさいし、よく理解できなかった。そのベスト盤はちょうど一曲目が「IGGY POP FAN CLUB」で、初めてナンバーガールのその曲を聞いて、歌詞の通り「ヘンな歌」だと思った。よくわからないながらも、その先輩のことが好きだったので、ずっと聴き続けていた。

 ある日、「ナンバガ、どう?」と聞かれて、よくわかってないくせに、適当に「ドラムがめちゃかっこいいっすね」と答えたら、嬉しそうにアヒトイナザワの魅力を語ってくれた。「入部してきた時、少しアヒトイナザワに似てると思ったんだよね」と言われた。「まあアヒトの方が全然イケメンだけどね」と付け足されながらも、嬉しかった。僕が初めて先輩という社会と、ちゃんと接するきっかけとなったのが、アヒトイナザワだったのだ。それからのめり込んでナンバーガールを聞くようになった。何もかもが新鮮に聞こえたし、よくわからなかったけど、段々と好きになっていった。「Num-Ami-Dabutz」のミュージックビデオを見て、ようやくナンバガの良さがはっきりと理解できたぐらいの時に、先輩は卒業し、「専門学校で好きな人ができた」からと、それから会うことはなくなった。

 その時に、昔、僕のバンドでやっていた、知っている人は知っている某曲を作った。今思えば、タイトルも曲調も安直すぎるし、若さと青臭さがあふれまくっている。あの熱量というか、雰囲気は十代のうちじゃないと歌えないなと思って、十九歳の最後のライブで歌うのをやめようと決めた。と、言いながらも、こないだの三月のライブで演奏したけど、もうやることはないと思う(この発言はフリになるかもしれません)。「笑いながらヘンな歌」って言ったのも、「君の顔のりんかくを一寸」思い出そうとしているのも、全部僕だった。マイブラも、シガーロスも先輩に教えてもらったし、よくある「彼氏に影響されて音楽を聴き始める女性」の逆バージョンが僕なのだ。今、大好きなバンドや映画も、美術の先生に教えてもらったものだし、笑っちゃうくらい好きな女性に影響されている。僕は特にその「異性に影響されて音楽を聴き始める人」に対してなにも思わないし、それでいいと思うんだけど、自分のこととなるとやっぱり恥ずかしい。タワレコで、たまたまジャケに惹かれて買ってからハマった、とか古い日本のロックが好きで、いろいろと探っている内に出会った、とか”主体的”に見つけて聞いてます、みたいな方がかっこいいからだ。

 だけど、そこから離れたくて、自分で自分の好きなバンドを見つけようと思って出会ったのがミツメだったりする。その嬉しさもあってミツメは世界で一番好きなバンドなのだが、たまにミツメのライブに行くとその先輩の姿があったりして、結局そこの影響は強いのかな、なんてことを思ったりもする。今はナンバーガールを聞くことはあまりなくなったけど、たまに聞き返しては、当時の風景や記憶を思い返したりしている。でも、今こうやってつらつらと書き連ねた記憶や風景も、思い返すと全部妄想のような気もしてくる。それも、すべて向井秀徳のあの「ヘンな」ギターサウンドを聞いていたせいだ、かもしれなせんね。

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