百年日記帖

ukiyo girlというバンドの人の非商業的な日々 目指せ百年

西多摩の川谷絵音

 少し前に髪を切りに行ったとき、美容師のお兄さんが僕の持っていたミツメのトートバッグを見て、物珍しそうな顔で話しかけてきた。

 

バンドか何かのやつですか?」

「そうです、ミツメっていうバンドで」

「どんなバンドですか?」

「うーん......スピッツみたいな感じですかね」

「じゃあ、あれですね、ゲスの極み乙女みたいな感じですね」

 

 僕はなぜ、スピッツからゲスの極み乙女へ飛躍したんだろう、と思いながら、これ以上、自分の土俵に上がらせるのは危険だと思い、「あ~まさにそんな感じっスね」と答えた。ゲスの極み乙女にも、ミツメにも申し訳ない気持ちになった。

 初めて会う人との音楽の話題は、いつも難しい。僕が音楽をやっているということが知れたとき、大抵「どんな音楽やってるんですか?」と聞かれるが、いつも返事に困ってしまう。広く名前が知られていて、なおかつ僕自身多大な影響を受けているバンドを引き合いにだして、「うーん、くるりみたいな感じですかね」と返すことが多いが、偉大なバンド、くるりでも伝わらない場合が多々ある。そういう時は、「あー、踊れないサカナクションみたいな感じですかね」と言うが、「ふ~ん......」とあまり芳しい反応をもらえない。「キラキラしてないスピッツみたいな感じですかね」と言っても同じだ。

 こうやって考えると、お兄さんの言っていたゲスの極み乙女という喩えは、ある種、正解な気もしてくる。確かに僕は前髪が重ためで髪型のシルエットが丸めなだけで「川谷絵音に似てるよね~実は性欲強いでしょ」みたいに言われたことが何度もあるし、あまり音楽を聴かない人からすれば、僕らのようなバンドのイメージに一番近いのはゲスの極み乙女なのかもしれない。ああそうか、俺は川谷絵音だったんだな、と偏った納得をしていると、友達から面白い話を聞いた。

 ある日、友達が、音楽にあまり詳しくない知り合いに、僕の曲を聴かせたところ「コブクロみたい」と答えたらしい。その話を聞いて、なんで「コブクロ」なんだろうと面白かったのと同時に、あまり主体的に音楽を聴かない人達が僕の曲を聴いた時に、コブクロが一番近い存在だったのが、とても興味深かったし、嬉しかった。僕は周りと比べて、少し低めで太めの声をしているので、黒田さんの歌声に近いと思ったのかもしれない。なので、次から「どんな音楽やってるんですか?」と聞かれたら、「うーん......小難しいコブクロみたいな感じですね」と答えることにした。いや、それもまた違うよな。