読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

百年日記帖

ukiyo girlというバンドの人の非商業的な日々 目指せ百年

『雪沼とその周辺』について

以前、ブログで江國香織の『とるにたらないものもの』というエッセイ集のことを書いた。 adballoon.hatenablog.com このエッセイ集では「緑いろの信号」「フレンチトースト」「輪ゴム」「干しブドウの味」のような様々な、とるにたらないけど、欠かせないも…

夜とドーナツ

大学時代、ずっとドーナツ・ショップで働いていた。「ドーナツ・ショップ」って表記すれば村上春樹的な、あるいはアメリカの青春映画に出てきそうな、冴えないけどクールな主人公みたいなイメージがつくかなと思ってそうしてみたが、ただの”日本で一番有名な…

ナンバーガールとぼく

昨日ブログで書いた、高校時代に作ったデモCDで使った写真が出てきた。 改めて見返してみると、埼玉のあの土地のさびしい感じがとても集約されているように思う。果てしなく広がっている茶畑と、絵に描いたようなくっきりとした鉄塔、それに右側に申し訳程度…

エキゾチズムと『入曽』

僕が通っていた高校は、西東京に近い埼玉の田舎にあって、静かな住宅街と、果てしなく広い茶畑に囲まれた、とても小さな学校だった。僕はそこまで、最寄り駅から電車で三十分、そこからスクールバスに乗って二十分、ドアツードアで毎日一時間以上かけて通っ…

乙女にあこがれて

乙女にずっとあこがれを抱いてきた。いつからそうなったのかはわからないが、年を重ねるごとにその想いは強くなる一方だ。乙女とはなにか、それは映画で言えばソフィア・コッポラの『ヴァージン・スーサイズ』や、『マリーアントワネット』、それから『ヘイ…

『モノクロトウキョー』と『弦楽四重奏第9番ホ長調「東京」』

サカナクションは、”東京”を描いてきたバンドだ。一聴してわかるものでも『仮面の街』『ユリイカ』『モノクロトウキョー』など様々な”東京”の歌があり、北海道出身者である山口一郎の目線で、それは語られている。中でも『モノクロトウキョー』はタイトルに…

山口一郎と寺山修司

昔、熱心に聞いていたバンドも、時が経つにつれて、あまり聞かなくなることが多い。熱が冷めた、とか嫌いになった、というわけではなく、真空の容器にそっとしまったまま、棚の奥で眠っている、とでもいうように、音楽を聞こうと思って聞く、というよりたま…

自由律俳句集 1

もはやこんな味だったっけなって言いたくて飲んでる この会はタレ派がマジョリティだった 気づいてはいるがレンズの方を見ない 遅刻して入ってきたやつを見るな 最初からつゆにつけて食べたい ちびっ子も並んでいるのを見て少し安心する 電車の揺れに合わせ…

FMヨコハマとせきしろ

「いや、FM横浜か!」 この間、バンドメンバーと共に渋谷を歩いていたら、突然こんな言葉が耳に飛び込んできた。路上で、男女数人のグループとすれ違ったときに、それは聞こえてきて、男性が誰かの発言に対して、突っ込むように上の言葉を投げかけていた。普…

リプトンとプロフィール

僕が中学生の時、学校で爆発的に流行っていた飲み物があった。それは、リプトンの紙パックの紅茶だ。僕が中学一年生の時だから、二○○七年のことだ。クラスの人気者のあいつも、勉強ができる真面目なあいつも、クラスのマドンナのあの子も、みんなあの四角い…

かなしみのレシート

レシートというものに、必要性を感じたことが、一度もない。例えば、経費の関係で領収書を切ったり、品物とお釣りなどのミスがないように、その証明書として発行されているのはわかるが、仮に十円、百円くらいのお釣りの貰い忘れがあっても、性格上、店員に…

樋口一葉『たけくらべ』について

電車に乗っているサラリーマンの顔を見て、ふと、その人の子供時代の顔つきを想像することがよくある。今の顔つきから連想するのではなく、「小さい頃は、こんな感じだったんだろうな」という映像がぱっと浮かんでは消える。子供の頃の面影のようなものが残…

江國香織と『薄荷糖の降るところ』

幼い頃、がらくたを集めるのが好きだった。がらくたというのは、”生きていく上で必要のないもの”だ。それはいったいどういったものかというと、例えば宝石の原石であったり、動植物の化石、遠い異国の砂漠の砂、ラムネの中に入っていたビー玉、小さな隕石の…

トーチソングと『日々のゆくえ』

自分の好きなものが、どうして好きなのか、考えることがある。しかし、それらを言葉で説明しようとすると、往往にして、うまく説明できないことが多い。好きであればあるほどだ。例えば、コード進行が巧みであるとか、情景描写がうまい、とか、技術であった…

『世界音痴』な僕ら

”自然”な人間に憧れる。”自然”というのは、そこに”馴染んでいる”ということだ。二十二年間、様々なことと格闘したり、しなかったりしてきたが、この”自然”さというものがどうしても身に付かない。 例えば、イヤホンで音楽を聴きながら、電車の座席に座ってい…

『お別れの音』とハヤシくん

よく通っているコンビニエンスストアに、ハヤシくんという店員がいる。僕の家からは、歩いていける距離に二つ、コンビニがあって、右と左にそれぞれ一つずつ、セブンイレブンがある。右側にあるセブンは、少し小さめの、家族で経営しているような、アットホ…

『サブマリン』について

自分の理想を具現化したかのような、完璧な作品に出会うことが、たまにある。音楽や小説、映画といったようなものは、たくさんの作品に触れていくうちに、個人の好みというものが段々と固まっていくが、僕はその好みの幅というものが、他の人に比べて狭い。…

Andy ShaufとSくんと僕

小学生の時に仲の良かった、Sくんという友達がいた。僕が小学生の時は、ちょうどデスノートという漫画が流行っていて、みんな夢中になって読んでいた。Sくんは、そのデスノートに登場する「L」という登場人物が好きすぎて、毎日学校に、長袖の白シャツとジー…

『春と盆暗』について

(ネタバレあり) 今年の初めくらいに読んだ、『春と盆暗』という漫画がとても良かった。たまたま近所の本屋さんで面出しされていて、月面で、女の子が道路標識を持ちながら立っている、という不思議な装丁に一目惚れして、内容を調べずに、すぐレジへ持ってい…

Committed To The Cause

自分の好きなもの、惹かれるものは、ほとんど、寒い場所で生まれている。例えば、シガーロスやビョーク、パスカルピノンを生んだのは、アイスランドのレイキャヴィクという街だ。ビクトル・エリセの『エル・スール』は、情熱的なイメージのあるスペインの中…

トーチソング

高校生の時、休み時間になるとよく美術室へ通っていた。教室にあまり居場所がなかったのと、美術の先生のことがとても好きだったからだ。その先生は、優しくて、親しみやすく、どこか遠い北欧の国から来たような、不思議な雰囲気と空気感をもった人だった。…

サンタクロースのゆくえ

気づけば、サンタクロースの存在を信じなくなっていた。齢二十二にもなるんだから、当たり前のことなのかもしれない。いつ頃から信じなくなったのか、どうして信じなくなったのかは覚えていない。だけど、僕は幼いころ、サンタクロースの存在を本気で信じて…

壁と卵とカントリーマアム

小学生のころ、友達の家へ遊びに行ったり、自分の家のおやつの時間に、カントリーマアムが出ると、嬉しかった。カントリーマアムとは、誰もが一度は口にしたことがあるだろう、あの中にチョコレート状の餡が入ったクッキーのようなお菓子である。僕は今でも…

アイドルとジョーク

最近、ふざけたい、という欲求が強くなった。なぜなら、ふざけてこなかったからだ。高校時代、唯一仲良かった友達が、数秒に一回のペースで雑なボケをかましてくるやつだったので、僕はボケに回ることができず、下手なツッコミをしながら、二人でゲラゲラ笑…

全裸の季節

去年の暮れ辺り、深夜にたまたまテレビで流れていた、とあるドキュメンタリー番組を見た。それは、現役のトップAV女優たちで結成されたアイドルグループを特集したもので、その内の三人のメンバーの、AV女優としての葛藤や苦悩、そして成長を追ったものだっ…

i'm lovin' it

マクドナルドが好きだ。マクドナルドとは、あのマクドナルドである。僕は今でも月に十回は食べるし、僕の学生生活は、マクドナルドに支えられていたと言っても過言ではない。 大学に入学したばかりの頃、元来の人見知りから、友達が一人もできず、昼食の時間…

Swing at somewhere

「不良にも優等生にもなれない僕たち」というのは、誰もが耳にしたことがある、一つの文化的、社会的なイメージ像であると思う。特に、サブカルチャーやポップカルチャーの中で、それらは育まれてきたが、僕はどうしてもそのイメージをうまく享受することが…

西多摩の川谷絵音

少し前に髪を切りに行ったとき、美容師のお兄さんが僕の持っていたミツメのトートバッグを見て、物珍しそうな顔で話しかけてきた。 「バンドか何かのやつですか?」 「そうです、ミツメっていうバンドで」 「どんなバンドですか?」 「うーん......スピッツ…

美男子と煙草と僕

「これからどんどん生長しても、少年たちよ、容貌には必ず無関心に、煙草を吸わず、お酒もおまつり以外には飲まず、そうして、内気でちょっとおしゃれな娘さんに気永に惚れなさい」 高校生の時、太宰の『美男子と煙草』のこの一節を読んで、この通りに生きよ…